「介護をサポートする制度を詳しく知りたい」
「介護保険を申請してといわれたが、そもそもどんな制度なの?」
介護保険は、年齢や病気などにより支援が必要になったとき、その人らしい暮らしを社会全体で支える制度です。
本記事は、介護保険の概要、どのようなサービスがあるか、利用するまでの流れなどを解説します
最後まで読むことで介護保険について理解が深まり、介護に対する不安を整理できる内容となっています。
介護保険とはどんな制度?

介護保険とは、加齢や病気により日常生活に支援が必要になった方を、社会全体で支える制度です。
高齢者の増加や核家族化の進行、介護離職などの社会問題を背景に、2000年4月に施行されました。
特徴的なのは、介護を「家族だけの問題」にせず、社会全体で支える仕組みとしてつくられている点です。
40歳以上の方が保険料を負担し、サービス費用の一部を公的に支えてもらえる制度設計となっています。[1]
医療保険との大きな違いは「目的」
介護保険は医療保険と混同されやすい制度ですが、目的や対象者が異なります。
| 種類 | 概要 |
| 医療保険 | 目的:病気やけがを治療するための制度 対象者:医療保険に加入しているすべての方(国民皆保険) |
| 介護保険 | 目的:介護が必要になったあとも、その人らしい生活を続けるための制度 対象者:40歳以上の被保険者で、要介護(要支援)認定を受けた方 |
医療保険は、病気やけがを「治療すること」を目的とした制度です。
原則として、日本に住んでいる方は公的医療保険に加入することになっており、診察や検査、手術など、治療を受ける場面で利用されます。[2]
一方、介護保険は介護が必要になった方が、能力に応じて自立した生活を送ることを目的とした制度です。
たとえば、病院の治療が終わったあとも、「一人で入浴するのが不安」「家事が難しくなってきた」といった変化を感じることがあります。
こうした場面で利用されるのが、介護保険のサービスです。[1]
介護保険は「高齢者だけ」の制度ではない
介護保険は「高齢者だけが使う制度」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。
実際には、40歳以上のすべての方が介護保険に加入しており、条件を満たせば65歳未満でも利用できます。[1]
また、介護保険は「重度になってから使う制度」ではなく、生活に支援が必要になりはじめた段階から利用を検討できる制度です。
「介護を利用すべきか迷っている段階」でも、制度の概要を知っておくことで、いざというときに落ち着いて対応できるでしょう。
介護保険を利用できる人・できない人の違い

介護保険は、保険料を払っていればすぐに使える制度ではありません。年齢と心身の状態によって、利用できるかどうかが決まります。
対象となるのは、大きく以下の2つに該当する方です。
- 65歳以上の方(第1号被保険者)
- 40〜64歳の方(第2号被保険者)
まずは、介護保険の対象についての考え方を整理してみましょう。
65歳以上の方(第1号被保険者)
65歳以上の方は、第1号被保険者と呼ばれます。これらの方は、介護保険を申請する際に介護が必要になった原因は問われません。[3]
たとえば、以下のような方が、要介護(要支援)の認定を受けることで、介護保険サービスが利用可能です。
- 認知機能の低下が見られる
- 年齢とともに足腰が弱ってきた
- 日常生活の一部に介助が必要になった
なお、要介護の認定を受けるためには、お住まいの自治体に申請して「介護が必要である」と認めてもらう必要があります。
申請については記事の後半で解説します。
40〜64歳の方(第2号被保険者)
40歳から64歳までの方は、第2号被保険者です。
この年代の方も介護保険に加入していますが、利用できる条件は限られます。
第2号被保険者が介護保険を利用できるのは、加齢が原因とされる特定の病気(特定疾病)によって介護が必要になった場合のみです。[3]
特定疾病とは、以下の病気です。
- がん(末期)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
これらの病気が原因で、日常生活に支援が必要な状態と認定された場合に、介護保険のサービスを利用できます。
一方で、一時的なけがや体調不良などの場合は、介護保険の対象にはなりません。その際は、医療保険や別の支援制度が使われることになります。
介護保険が利用できないケースもある
年齢や状況によっては、介護保険を利用できない場合もあります。以下は介護保険が利用できない例です。
- 一時的な体調不良やけがのみの場合
- 40〜64歳で、特定疾病に該当しない
- 「要介護認定」の申請を行っておらず、認定を受けていない
こうしたケースでは、介護保険ではなく、医療保険や別の福祉サービスが使われることがあります。
なお、介護保険の対象になるかどうかは、本人や家族だけでは判断しにくいこともあります。
迷ったときは、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口や、地域包括支援センター(※)に相談しましょう。
※地域包括支援センター:各市町村に設置されている介護や福祉の相談や支援を行う窓口[4]
要介護・要支援とは?介護保険を使うために必要なこと

介護保険のサービスを利用するためには、「要介護」または「要支援」の認定が必要です。
この認定過程を要介護認定といいます。
要介護認定は、年齢や病気だけではなく、日常生活のなかでどの程度の支援が必要なのかをもとに判断されます。
ここからは、要介護認定の考え方について見ていきましょう。
要介護認定とはなにか
要介護認定は、どの程度の支援が必要かを判定するための仕組みです。
市区町村に申請を行うと、心身の状態や日常生活の様子などをもとに「介護がどのくらい必要な状態か」が判定されます。
ここで確認するのは、移動や食事、入浴、排せつなどの生活に関する点や、認知症に関連した問題行動の有無などです。
判定は、申請後の調査を経て行われ、「どれくらい介護が必要か」の区分が決まります。
この認定を受けることで、介護保険のサービスを利用できるようになるのです。[5]
要支援と要介護の違い
要介護認定を受けると、本人の状態に応じて「要支援1・2」「要介護1〜5」「非該当」の3つに分類されます。それぞれの違いは以下の通りです。
| 区分 | 概要 |
| 要支援1・2 | 食事、入浴、排せつなどに部分的な支援が必要な状態基本的には自立しているが、将来的に介護が必要になる可能性がある |
| 要介護1〜5 | 食事、入浴、移動などの日常生活において常時介護が必要な状態 |
| 非該当 | 現時点では介護保険による支援が必要ではない状態 |
数字が大きくなるほど、介護が必要な状態となります。
要介護認定は「生活にどれくらい手助けが必要か」により区分されており、介護サービスを利用するかどうかを判断するための大切な材料になります。
なお、非該当になっても、支援がまったく受けられないというわけではありません。状況に応じて、市町村が中心となって行っている生活支援サービスが受けられる場合もあります。
介護サービスは「認定を前提」に利用する制度
介護保険のサービスは、原則として要介護(要支援)の認定を受けてから利用する制度です。
「すこし手伝ってもらえれば楽になるのに」と感じていても、認定を受けていないと介護保険によるサービスは利用できません。
ただし、要介護認定の申請後、早急に介護が必要だと判断された場合は、認定結果がでる前にサービス利用できるケースもあります。
いずれにしても、「困りごとが増えてきた」「家族の負担が大きくなってきた」と感じた段階で、早めに相談しておくことが大切です。
介護保険で受けられる主なサービス

介護保険では、介護が必要な方の生活状況にあわせて、さまざまなサービスを受けられます。ここからは、代表的なサービスを見ていきましょう。
- 自宅で受けるサービス
- 生活環境を整えるためのサービス
- 通って受けるサービス
- 一時的に泊まるサービス
- 施設で受けるサービス
それぞれ、解説します。
在宅で受けるサービス
介護保険では、住み慣れた自宅で生活を続けながら必要な支援を受けられます。在宅生活に関連した主なサービスは以下の通りです。
| サービス名 | 概要 |
| 訪問介護 | ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事、入浴、排せつの介助や、掃除、洗濯などの生活支援を行う |
| 訪問看護 | 看護師が自宅を訪問し、体調管理、医療的ケア、服薬管理、療養上の相談などを行う |
| 訪問リハビリテーション | リハビリ職が自宅を訪問し、身体機能の維持や回復を目的としたリハビリを行う |
| 訪問入浴介護 | 専用の入浴設備を持った車で訪問し、自宅での入浴を支援する |
| 居宅療養管理指導 | 医師、歯科医師、薬剤師などが訪問し、療養上の管理や指導、服薬管理の助言を行う |
これらのサービスは、本人の状態や生活環境にあわせて組み合わせて利用します。
「できるだけ自宅で過ごしたい」という方にとって、これらのサービスは介護保険の中心となる支援といえるでしょう。
生活環境を整えるためのサービス
介護保険では、介護を受ける方の生活環境そのものを整えるサービスも用意されています。主な環境整備に関するサービスは、以下のとおりです。
| サービス名 | 概要 |
| 福祉用具貸与 | 車いすや歩行器、介護ベッドなどをレンタルできる |
| 特定福祉用具販売 | 入浴や排せつに使う福祉用具を購入できる(一部対象) |
| 住宅改修 | 手すりの設置や段差解消など、自宅を安全に使うための改修を行う |
身体の状態や生活動線にあわせて環境を整えることで、自立した生活を続けやすくなります。
ほかの介護サービスと組み合わせて利用することで、自宅での生活をより安心して続けやすくなります。
通って受けるサービス
自宅から施設に通って利用するのが、通所によるサービスです。
日中に施設へ通い、食事や入浴、機能訓練などの支援を受けながら過ごします。
本人の心身の状態を保つだけではなく、家族の介護負担を軽くすることにもつながります。
主な通所によるサービスは以下のとおりです。
| サービス名 | 概要 |
| 通所介護(デイサービス) | 日中に施設へ通い、食事、入浴、機能訓練、レクリエーションなどを受ける |
| 通所リハビリテーション(デイケア) | 医療的な視点を取り入れながら、リハビリテーションを中心とした支援を受ける |
| 認知症対応型通所介護 | 認知症の方を対象としたケアを提供するサービス小規模な施設で、少人数でのきめ細やかな支援が受けられる |
| 療養通所介護 | 常時看護師による観察が必要な方を対象とし、医療機関併設または医療機関と連携した施設で提供されるサービス |
これらは「自宅での生活を続けながら、日中だけ支援を受けたい」という方に適したサービスです。
介護が必要な方にとっては、外出の機会や人との関わりが増えることで、心身の安定につながることもあります。
一時的に泊まるサービス
一時的に泊まるサービスは、一般的にショートステイと呼ばれ、在宅での生活を基本としながら、必要に応じて一時的に利用するサービスです。
| サービス名 | 概要 |
| 短期入所生活介護(ショートステイ) | 介護施設に短期間入所し、食事、入浴、排せつなどの日常生活の支援を受ける |
| 短期入所療養介護 | 医療的な管理が必要な方が、医療機関や介護施設で療養しながら支援を受ける |
ショートステイは、家族が介護から離れて休息を取るためにも利用されます。介護する側の負担を軽くし、無理なく在宅介護を続けていくために大切なサービスです。
施設で受けるサービス
介護保険には、介護施設に入所して生活全体の支援を受けるサービスもあります。主な施設サービスは以下のとおりです。
| サービス名 | 概要 |
| 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | 常に介護が必要な方が入所し、日常生活全般の介護を受けながら生活する |
| 介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目指し、リハビリテーションを中心とした支援を受ける |
| 介護医療院 | 医療的な管理が必要な方が、長期的な療養と生活支援を受ける |
介護施設では、食事や入浴、排せつなどの日常生活の介助を受けながら、状態に応じた見守りや医療的なケアをふくめた支援が行われます。
施設によって受けられるサービスが異なるため、状況に応じて選択しましょう。
介護保険の費用と自己負担の考え方

介護保険にかかる費用は、保険料によってまかなわれていますが、サービスを利用する際に一部自己負担が生じます。
自己負担額は収入に応じて異なり、原則としてサービス費用の1〜3割となっています。自己負担額の考え方や詳細について見ていきましょう。
介護保険料の支払いの仕組み
介護保険は、40歳以上の方が保険料を支払う制度です。
介護保険料は、公的医療保険(健康保険や国民健康保険)の保険料に上乗せして徴収される仕組みとなっています。[1]
多くの方は、給与や年金から自動的に差し引かれているため、普段あまり意識することがないかもしれません。
この保険料をもとに、介護が必要になったときのサービス費用が社会全体で支えられています。
介護サービスを利用するときの自己負担額
介護保険によるサービスを利用する場合、かかった費用の1〜3割が自己負担となります。
自己負担額は所得に応じて変わりますが、基本的には「一部を自己負担する制度」と考えておきましょう。
なお、負担割合の決め方は以下の通りです。
| 負担割合 | 条件 |
| 3割 | 年金収入などをふくめた年間収入が約340万円以上(単身世帯の場合) ※合計所得がおおむね220万円以上あり、年金をふくめた年間収入が約340万円以上の場合(夫婦世帯の場合は約463万円以上) |
| 2割 | 年金収入などをふくめた年間収入が、約280万円以上(単身世帯の場合) ※合計所得がおおむね160万円以上あり、年金をふくめた年間収入が約280万円以上の場合(夫婦世帯の場合は約346万円以上) |
| 1割 | 年金収入などが280万円未満 |
実際の自己負担割合は、市区町村から交付される介護保険負担割合証で確認できます。
「自分や家族が何割負担になるのかわからない」といった方は、書類や介護保険の相談窓口で確認しましょう。
介護保険を利用するまでの大まかな流れ

介護保険は、申請すればすぐにサービスがはじまるわけではありません。
いくつかの段階を踏んで、その方にあった支援が決まる仕組みになっています。
- 介護保険利用の申請
- 要介護・要支援の認定
- ケアプランの作成
- 介護サービスの利用開始
利用開始までの流れを見ていきましょう。
介護保険利用の申請
介護保険を利用するためには、要介護認定の申請が必要です。窓口は、お住まいの市区町村役場となります。
申請は原則として、介護保険を利用する本人が行うのが基本ですが、難しい場合は家族や居宅介護支援事業者や地域包括支援センターの職員などにより代行可能です。[6]
また、地域包括支援センターでは、介護申請をふくめた介護についての不安ごとを相談できます。
「介護保険を使えるかもしれない」と感じた段階で、まずは相談、申請を行いましょう。
申請の具体的な流れについては以下の記事をご覧ください。

要介護・要支援の認定
市区町村で申請を行うと、日常生活の様子や心身の状態をもとに、要介護(要支援)の認定が行われます。
まず、調査員が本人のもとを訪問し、歩行や食事、入浴、排せつといった日常生活の動作や、認知機能の状態などを確認します。
あわせて、かかりつけ医によって作成されるのが「主治医の意見書」です。
主治医の意見書は、本人の病状や心身の状態について医師が医学的な立場から記載する書類です。[5]
これらの情報をもとに審査が行われ、「どの程度の支援や介助が必要な状態か」が判断されます。
認定結果による区分は以下の通りです。
| 区分 | 概要 |
| 要支援1・2 | 日常生活はおおむね自立しているものの、見守りや軽い支援が必要な状態 |
| 要介護1〜5 | 日常生活のなかで、継続的な介助が必要な状態 |
| 非該当 | 介護保険による支援が必要な状態とは判断されなかった場合 |
この認定結果によって、介護保険サービスを利用できるかどうか、また、どの程度の支援が受けられるかが決まります。
ケアプランを作成
要介護認定を受けて、介護度が決まったら、ケアプラン(介護サービス計画)が作成されます。
ケアプランは、本人の状態や生活状況の希望などをふまえながら、どのサービスをどれくらい利用するかを整理するための計画です。
基本的にはケアマネジャーが作成するもので、「要介護」「要支援」によって相談先が異なるため注意が必要です。
| 分類 | 相談先 |
| 要支援1・2 | 地域包括支援センター |
| 要介護1〜5 | 居宅介護支援事業所 |
ケアプランは、一度つくって終わりではなく、心身の状態や生活環境の変化に応じて、見直しながら利用していきます。
本人の意見も取り入れながら作成するため、希望があればケアマネジャーやサービス事業者へ伝えましょう。
介護サービスの利用開始
ケアプランに基づき、訪問介護やデイサービスなどの介護サービスの提供がはじまります。
なお、サービスがはじまったあとも、ケアマネジャーが相談窓口となり、利用状況の確認やサービス調整を行います。
ケアプラン(サービス内容)は、心身の状態や生活環境の変化に応じて、内容を見直すことが可能です。
「思っていた支援とあわない」「介護の負担が変わってきた」といった場合でも、ケアマネジャーに相談し、サービス内容や利用回数を調整してもらいましょう。
介護保険はいつから考えればいい?タイミングの目安とは

介護保険の利用を考えるタイミングに決まりはありません。
日常生活に不安を感じはじめたときや、将来の介護に備えたいときが一般的な目安となります。
介護保険は「なにもできなくなってから使う制度」ではありません。
65歳以上の方は、原因を問わず、生活に支援が必要になった段階から介護保険の対象です。
また、40〜64歳の方は、特定の病気がある場合に介護保険を利用できます。[3]
たとえば、以下のような変化を感じた段階でも相談できます。
- 外出がおっくうになってきた
- 家族の見守りが必要になってきた
- 家事や身の回りのことに時間がかかるようになった
すぐに介護サービスを利用しなくても、使えるタイミングや、支援の内容を知っておくだけでも慌てず行動しやすくなるでしょう。
介護保険を利用して自分らしい生活を

介護保険は日常生活に支障がでたときに、その人らしい生活を社会全体で支える制度です。
高齢者が利用するイメージがある制度ですが、対象となるのは条件を満たした40歳以上の方となります。
介護は、本人だけでなく家族にとっても負担になりやすいものです。
「これくらいで相談していいのかな」と感じる段階でも、ひとりで抱え込まず利用を検討したり、相談したりすることができる制度であることを覚えておきましょう。
参考資料:

